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第2話「協力者」
10年前の冤罪
坂本哲治の自宅から冤罪の証拠とそれに関わっていた人物たちの名簿を手に入れた月城。
そこに名前があったのは、元警視監の坂本を含めて5人だった。
そして、もう1人。本来、死刑になる犯人の名前だった。
「犯人が分かっていたのに、兄さんを死刑にしたのか。」
と資料を見ながら涙を流す月城。
その真相は、あまりにも悲惨すぎるものだった。
「他の4人も別の証拠を隠し持ってるはずだ。勘付かれる前に集めに行かないと…」
そう言って、月城は家を出た。
田中家の窃盗
月城が向かったのは、10年前兄・透の死刑執行を執行した1人である田中護という男の家だった。
日本では、死刑執行としては絞首刑が使われている。
死刑囚は、部屋の真ん中まで連れて行かれ頭に袋を被せられる。
そして、そのまま天井から吊るされている縄の輪の部分に頭を入れられ、スイッチを押すことで床が抜け、吊るし首になる。
その時にスイッチを押す役目は3人が担当する。
これは、自分が人を殺したのだという罪悪感を軽くするためだ。
そして、田中護はそのうちの1人だったのだ。
田中家に着いた月城は難なく自宅への侵入に成功した。
田中護とその妻は既に就寝しているようだった。
リビングに入ると、テーブルの上に数枚の紙が置いてあった。
それを手に取る月城、
「これは…10年前の…」
その瞬間、リビングの明かりがついた。
焦る月城だったが、
「光くんか?」
その声には聞き覚えがあった。声をする方へ振り向く月城。
「もしかして、あなたは…」
声の主は、田中護だった。そして、その顔を見た月城は一目でわかった。
昔、兄・透とよく一緒にいた人物だった。
そして、兄・透とはいつも仲良さそうに話していた。
でも、月城は話したことは一度もなく、名前も知らなかったのだ。
「僕が田中源造だよ。透の弟だね。」
兄と仲が良かったはずの田中護がどうして10年前の冤罪事件に関わっているのかわけがわからなかった。
「どうして、あなたが兄を…裏切ったんですか…」
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