月城透の正体
兄・透と仲が良かったはずの人物・田中護が10年前の兄の冤罪事件に関わっていたことに驚きを隠せない月城。
そして、怒りもこみ上げてくる。
「どうして、兄を…冤罪だと知っていてどうして…」
と、田中護の胸ぐらを掴む月城。
「すまない、光くん。あの時は、ああするしかなかったんだ。」
「ああするって、あなたにとって兄はなんだったんですか。どうして兄を見殺しにしたんですか…」
泣き崩れる月城。
「君は、まだ知らないんだよ。本当の透を」
ゼロの協力者
「本当の兄とはどういうことですか?」
田中護に聞く月城。
「そもそもどうしてわざわざリビングのテーブルにこの資料を置いていたと思う?
それは、光くんがこの家に来るとわかっていたから置いていたんだよ。
佐藤元監視官の自宅に窃盗が入ったと聞いて、透の死が冤罪事件によるものだと知った君の犯行だと思ったから。
でも、誰にも話していないから安心してくれ。僕は君の敵じゃない。」
「そんなこと信じれるわけありません。」
兄を裏切ったはずの田中護が自分の味方だと言っていることに、月城は全く理解ができなかった。
「光くんは、透が何をしていたのか知っているのか?」
「兄はカフェを経営するどこにでもいるような一般人でした。間違っても、死刑になるようなことは何もなかった。」
兄・透はカフェを経営し、田中護はよくそのカフェに来て兄と楽しそうにいつも話していた。
その男がまさか兄の冤罪事件に関わっていたなんて信じられなかったのだ。
「表向きはね。でも、透の本当の仕事は違うんだよ。」
「どういうことですか。兄は毎日カフェを経営していた。毎日そんな兄を僕は見ていた。」
「本来この話は外部に絶対に漏らしてはいけない機密情報だったが、光くんには知ってもらう必要がある。
警視庁公安部にあるゼロという存在を聞いたことがあるか。
表には出ず、裏でこの国の治安を守ろうとする組織だ。
しかし、そのためなら時には違法捜査も行う。
そして、この名が付けられた。
『存在しない組織であれ』という意味を込めた『ゼロ』」
「本当にそんな組織が存在したんですか…」
「そうだ。そして、今も存在している。
僕もその一員だった。そして、彼らには捜査や作業を協力する協力者がいる。
その協力者の1人が君の兄・透だった。」
コメント