光の協力者
「協力者であることで、その存在はゼロによって守られる。
そして、捜査に協力してもらうというわけだ。」
「それなら、どうして兄は警察に殺されなくてはいかなかったのですか。」
「透は優秀すぎる協力者だった。
むしろ協力者にするべき存在ではなかった。
協力者となったことで、透は自分の優れた才能に気づいてしまった。
物事をなんでも見通してしまう。どんな事件でも透に協力を頼めばすべてうまく進んだ。
光くんも身に覚えがある才能だろう。
君の場合は窃盗事件においての話だけど、透は窃盗だけじゃないもっと凶悪な犯罪、事件に関してもその才能は発揮された。
だからこそ、許せなかったんだ。
10年前のあの事件のことを。」
月城には全く何が何だかわからなかった。
なぜ兄が殺される必要があったのか、兄が公安部・ゼロの協力者だった。
自分の追っている冤罪事件が恐ろしく感じてしまう。
「10年前、本当は何があったんですか。」
「冤罪事件に関しては詳しくは話せない。すまない。」
「なぜですか。やはり兄を裏切ったんですか。」
「そうじゃない。僕は監視されている。
透とはゼロと協力者という関係になる前からずっと仲の良い友人だった。
本当は透を死なせたくはなかった。」
「あなたはもう警察を辞めているんですよね。なのに、どうして監視されているんですか。」
「辞めてから10年前の冤罪事件に関わる情報を外部に漏らさないか見張っているんだ。
深夜でさえも家の外に出歩くようなら、尾行される。
おそらく電話も盗聴されている。」
「それって違法じゃないですか。」
「だから言っただろう。彼らは違法な捜査もやってのける。
そして、後から世間からはわからないように隠しなかったことにする。
僕を監視しているのもゼロの一員だよ。でも、彼らは何も知らされていない。
今警察内部で10年前の冤罪事件について知っているのは、ゼロを統括している裏の理事官だけだ。」
監視されている中、ここまで話をする田中護が何を考えているのか疑問で仕方なかった。
「どうして僕にそこまで教えるんですか。僕は兄の冤罪事件に関わる全ての人間を恨み、復讐しようと考えています。
あなたはそれに気づいている。僕に話して何のメリットがあるんですか。」
「それが透の望みだったからだよ。透は何でも見通すことができた。
だから、10年前の事件の真相もすぐに透は気づいた。
透に罪をなすりつけた本当の犯人も透は知っていた。
それを隠そうとする警察上層部の人間やゼロを許せなかったんだ。
そして、自分の命が狙われているとわかった透は君がこの冤罪事件について気づけば、何をしてでも真相を求めようとすることもわかっていた。
実際、僕は冤罪事件の真相の全てを知るわけではない。
そんな事件があったことは透に言われるまで知らなかった。
でも、透は僕に言った。
『お前が俺の死刑を執行してくれ。そして、この冤罪事件の真相を追おうとする光を守ってやってくれ。でも、道を踏み外すようなことがあれば、その時は光をなんとしても止めて欲しい』とな。
だから、僕は今日光くんがここに来るのを待っていた。
そして、ここからは僕が君を守り、協力する。
僕の知る情報や最大限の協力をしよう。
君の協力者として、透の友として。」
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